桜がピンクで何が悪い!

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 ***  で。しょうもないのは、僕も同じだったわけである。  僕がクウヤに絡まれたのは桜のせい、桜がピンクだからいけないんだこんちくしょう!という発想になってしまった。今なら八つ当たりだとわかるが、当時の僕は幼稚園児。そんな考えの理不尽さなんて気づけるはずもない。  桜なんか嫌いだ。桜がピンクであるせいで、サクラ組になったことで馬鹿にされるようになってしまったんだと怒りの矛先を完全にそっちに向けてしまった。悪いのはそんな下らないことで人を馬鹿にするクウヤであり、桜には本来何の罪もない。クウヤに勝てないからって、全部桜が悪いということにしてしまうなんてなんとも情けない話である。  でもって、気弱な僕が何をしたかといえば。桜に向かって大嫌いだーっと叫ぶこと以外には、お絵描きで桜の花の色を全然違う色で塗りたくることだったのである。何の解決にもなってない。 「リーチくん?なんで桜が青色なのかな?」 「嫌いだから!」  戸惑うような先生の言葉に、僕は堂々と言い放ったのだった。 「サクラがピンクなのがいけないから!ピンクは女の色だから嫌なんだ!僕は男なのに!」  小学生くらいまで、僕は女みたいな顔がコンプレックスだったことも付け加えておく。女みたい、と言われるとあっさりキレる子供だった。クウヤも絶対、それがわかっていてからかってきていたのだろうが。  そんなある日のこと。  桜もかなり葉桜になり始めたその日、僕がいつものように画用紙に“青い桜”をクレヨンでベタベタと塗っていた時だったのである。 「お前、いい加減にしろよ」  突然声をかけられた。僕は驚いて顔を上げる。いつからそこにいたのだろう。ピンクの髪の、僕よりちょっとだけ年上に見える男の子が、僕のことを鋭く睨みつけていたのである。  幼稚園のお遊戯服を着ていない。彼は部外者だ、と子供ながらに気がついて、僕は辺りを見回す。そして知ったのである――いつの間にか部屋には、僕と少年以外に誰もいなくなっていることに。 「え、え?あれ、みんなは?」 「みんななんてどうでもいいだろ。俺はお前と話をしてるんだ」  少年は戸惑う僕に、ぐいっと顔を近づけてきて言ったのだった。
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