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「お前、自分が弱いのを俺のせいにしやがって。何が、桜がピンクのせい、だ。喧嘩で勝てないからって人に八つ当たりしてんじゃねぇよ!」
その言葉で僕は理解したのである。彼は、桜の精霊か何かなのだと。ピンクの髪にピンクの服。確かに、何もかもが桜色だ。
「だ、だってピンクは女の子の色じゃん!男がピンク着てたりしたらかっこわるいって言われるじゃん!」
僕は慌てて反論する。
今なら少しその認識も違うのだろうが(なんせ、戦隊ヒーローのリーダーがピンクの男性になったりする時代だ)、当時はやっぱりピンクは女子の色というイメージが強かったのだった。事実、クウヤもそう思っていたから、サクラ組になった僕を馬鹿にしてきたのである。桜がピンクでなければ、僕は彼と喧嘩にならなかったのに。
「男がピンク着て何が悪い?ピンクはイチゴの色で、春の色だ。どっちもこの国のたくさんの人が好きな色だろ。じゃあ、ピンクを好きな人はみんな女なのか?違うだろ!」
「で、でもピンクは弱そうだしっ」
「弱いのはお前じゃねえか、よ!」
「わ」
次の瞬間、僕の景色は反転していた。視界に映る天井、背中に衝撃。目の前のピンクな男の子に投げ飛ばされたらしいと、数秒遅れて理解した。
「す、すご……」
幼稚園の教室の床は柔らかい素材で出来ている。だからふんわり投げられたくらいでは全然痛くなかった。何より僕は、多少の痛みなんか忘れるほど感動していたのだ。
ピンクの男の子は、けして体が大きいわけではなかった。むしろ、僕と同じくらい華奢に見えたのに、あっさりと僕を投げ飛ばしてみせたのだ。凄い技だと子供ながらに理解したのである。
「これでも俺は弱いか?弱くねえだろ」
「う、うん」
「わかったようで何より。サクラ組になったからってなんだ。だからお前が弱くなるわけじゃねえ。そんな事関係なく、強いやつは強いし、弱いやつは弱い。わかったかクソガキ」
「く、クソガキじゃないもん!僕はリーチ!」
がばり、と体を起こして僕は少年に懇願したのである。
「お願い、サクラくん!僕にも、強くなる方法を教えて!」
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