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こうして共犯者として秘密を共有した私たちは、教室でも一緒にいることが増えた。人間関係に対する考え方が、似ていたのでお互い過ごしやすかったのだ。
「真奈、最近立花くんとよく一緒だよね。付き合ってるの?」
「映えるカフェでご飯食べるの手伝ってもらってるんだ」
「デートじゃん、ウケる」
「それな~まあ立花くんに彼女できるまで、かなぁ?」
「え~真奈は狙ってないの?」
「私にはもったいないよ。お世話になってるけど」
「そうだね、立花くんと一緒にいるようになってから、呼び出し回数減ってるもんね」
「断るのってカロリーいるんだよね。気まずくもなるし、空気悪くてサイアクじゃん」
「だれでもいいから付き合ってみればいいのに」
「それができたら苦労しないんです~」
普段の私は、来るものを拒まずのような空気だから軽い感じの告白が多い時期があった。中には真剣なものもあったが、よく知らない相手と付き合えるほど、私の肝は据わっていなかった。意図せず立花くんとの交流が告白する抑止力になっているし、立花くんはカフェスイーツの研究もできてwin-winの関係なのである。
「なあ、週末空いてるか?気になってる店があるんだけど」
「え?バイトじゃないの?たくさん作れるから土日多めに入ってるんじゃ……」
休み時間の時に立花くんがスマホをこちらに見せてそう言った。画面にはいちごフェアのイベントサイトが表示されており、ホテルのパティスリーで開催されるらしい。
「平日はこういう店にゆっくりできないだろ?」
「うわ!可愛い!いちごフェア……行こ行こ!いい写真がたくさん取れるし」
「……やっぱり相園も、こういう凝った見た目のスイーツがいいのか?」
「凝ったのって全部美味しいイメージあるよね。そうだ、ついでに予約とったげる~」
「ありがとう、助かるよ」
「立花くん、彼女できたらちゃんと自分でやってあげるんだよ」
「はは、俺はお言葉に甘えただけだぞ。相園は手際がいいからな」
「そうやってラクしてるの知ってんだからね」
それなりに軽口も叩き合うようになった。普段人当たりがよさそうな雰囲気を醸し出しているくせに、ちゃっかりと私に乗っかるような奴だ。クラスのみんなには見せない一面が見れて嬉しくなるくらい、私はどうかしていた。
つかず離れずの、自分にとって都合と心地の良い関係が続いていた時、彼の幼馴染についてよく聞くようになった。それがいおりちゃんである。
「俺の幼馴染、イチゴのケーキが好きでさ。こういう華やかな切り方とかできるようになったらよろこんでもらえると思ってさ」
「デザインの協力だったらできるかも!今度なんかやってみようよ」
なんてやりとりを彼のバイト先でしたこともあった。デザイン画を描いて、いろいろと再現してみたりして。私は彼の作ったお菓子を、美味しく食べることはできなかったけど、本当に楽しいひと時だった。
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