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こんな風に自分の身勝手な行いをあれこれ考えては落ち込むなんて、本当に馬鹿馬鹿しい。これで何か解決するわけでもないのだから、いちいち悩むだけ損だ。
今は学園に潜んでいる魔女のことについて、自分がこれから何をすべきかを考えた方がいいだろう。
「先輩、この間の話なんですけど」
「ミサについてのことか? 俺は、あの時のことはあんまり思い出したくないんだが」
「先輩にとってはつらい出来事だものね。でも、仮に彼女が魔女だった場合……浅岡さんに何か、危害を及ぼしてしまう可能性があります」
「ッ!」
新太は大げさに顔をしかめ、くしゃりと菓子パンのビニールを握りつぶした。
「先輩は、魔女によって危ない目に遭い掛けたんでしょう。先輩と一緒にいる浅岡さんも、いつ巻き込まれてしまうかわからない」
「……ミサが、麗奈に危害を加えるっていうのか?」
「可能性の話ですよ。でも魔女に関する情報は少しでも集めておきたい。何か手掛かりがあればいいけど」
直哉が言うと、新太は少し考えるような仕草を見せた後にふと顔を上げた。
「そういえば、ミサのことなんだけど」
「何か思い出したことでもあったんですか?」
直哉が期待を込めて尋ねると、新太は少し複雑そうな表情を浮かべながらも続けた。
「たいしたことじゃねえよ。ただあいつと喧嘩したのがきっかけで、あの事故が起きたわけだろ……その喧嘩の内容を思い出したってだけさ」
苦笑交じりに新太は答える。
「それ、興味があります。もしかしたら魔女について何かヒントが得られるかもしれないし」
直哉が促すと、新太は少し困ったようにぽりぽりと頬を掻いた。
「あいつが事故に遭う少し前に、プレゼントをあげたことがあってさ」
「ん? もしかして今から何かキザな思い出話でも始まる感じです?」
「あんまり茶化すとなんも教えてやんねーぞ」
「ごめんなさい真面目に聞きます!」
直哉が素直に謝ると、新太は一度肩をすくめてから話し始めた。
「ミサは綺麗な髪をしていたから、それに似合うリボンをプレゼントしたんだ。あいつ、すごく喜んでくれてさ」
俯きがちに、新太は当時のことを思い出しながら語っている。
「それ以来、毎日そのリボンを付けて学校に来てくれたよ。それを見るたびに俺はすごく嬉しくなってさ。ミサはあのリボンを、大切な宝物だって言ってくれたんだ」
「そうなんですね」
直哉は無難な返事をした。美鈴だったら、この惚気話をからかっていたことだろう。
「で、お二人の喧嘩の原因がそのリボンだったと?」
「うん……そう、なるな」
それから新太はやや言いよどむ様子を見せたが、やがて意を決したように口を開いた。
「事故の日にさ、ミサはあのリボンを付けていなかった。本人は、無くしてしまったと言っていたよ。でも俺は、あいつがわざと無くしたフリしてたんじゃないかって思ってしまった」
「どうしてですか?」
「ミサに、からかわれているんだと思ってさ」
苦笑交じりに新太は言う。
「でも喧嘩になるってことは、そうとう厳しい言葉で責めちゃった感じ?」
「そう、だな。俺はあいつの言葉を信じられなかった。今になって思えば、どうしてあそこまで疑ったのかもわからない。それこそあんなに感情的に責める必要なんてなかったのに」
よほど後悔しているのだろう、新太の声は暗く沈んでいる。
「それでつい、カッとなって怒鳴っちまって……そのまま喧嘩になっちまった」
新太はバツが悪そうに頭を掻いた後、大きく溜め息をついた。
「今でも、俺は馬鹿だったと思っている。ミサのことを心から信じていたら、あんなことにはならなかったんだろうなって」
「……そのリボンは、結局見つかったんですか?」
直哉が尋ねると、新太はこくりと頷いた。
「見つかったよ。つい、昨日な」
「えっ、ちょー最近! あ、もしかしてそのリボンが見つかったから、詳しいことを思い出したと?」
直哉が尋ねると、新太はまた頷いてみせた。
「そんなとこだな。あのことをあいつに謝罪したいけど、今更謝ったって許してくれるわけがねえよな」
新太は自嘲しながら、情けない声で呟いた。直哉はそんな彼に対して、何も言ってやれなかった。
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