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「ここで、一緒に写真撮らない? 最後だし」
柊木くんは、私の手を引くと、看板の前に立った。そして、スマホで私たちを映し出すと、カシャッとボタンをタップする。
最後、という言葉が、胸に刺さった。
そう、最後なんだ。
この先、私たちはこんな風にこの学校の中で同じ時間を刻むことはない。
今までだったら、同じクラスになる確率を計算したり、隣の席になる確率を計算したりしていたけれど、街中で偶然に会う確率は、それらに比べたら相当ゼロに近いはずだ。
ずっとずっと、好きだった。
そんな想いが、閉じ込めておいた箱からパッと飛び出してくる。柊木くんが美沙を選んだ瞬間に、閉じ込めたはずの片想いが突然暴走し始めた。
「柊木くん、好きです」
「え? 浅野、え?」
柊木くんは、驚きを隠せない様子だった。
「ごめんごめん、忘れて。昔のことだから。今日が最後だったからね、ちょっと言いたくなっただけなの」
決して、ずっと柊木くんへの想いを抱えていたわけじゃない。柊木くんのことを諦めた後は、ちゃんと他に好きな人ができた。もっともその相手も、美沙の彼氏になってしまって、叶うことはなかったけれど。
「いや、忘れない。いつから?」
「言わない」
私は、クルッと柊木くんに背中を向けた。
「浅野が言ってくれないなら、俺が言うわ」
「え?」
なにを言うの? と思った瞬間、私は柊木くんに抱きしめられていた。
「俺、本当はずっと浅野のことが好きだった」
「え?」
「美沙と付き合っている間も、ずっと」
「なに言ってるのよ」
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