side:死神②

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side:死神②

 営業時間終了間際に駆け込んできた少年は、死神と同じ黒のスーツ姿をしている。  そしてその胸には、王冠の形をした金のブローチが輝いていた。 「この店の先代のマスターは、ご高齢な方でしたよ。君は、お知り合いですか?」 「兄がとてもお世話になった人なので、お礼を伝えて欲しいと頼まれていたのですが……。先代という事は、もう、辞めてしまわれたのですね」  少年が残念そうにうつむく。 「何か伝言があるなら、僕でよければ承りますよ。先代のマスターは、今は療養施設で生活されていますので」  帳の言葉に、少年は弾かれたようにうつむいていた顔を上げた。 「お願いします! ぜひ、ご伝言お願いいたします」  見た目の年齢よりもずっと大人びた口調の少年が、その瞬間くしゃりと幼い笑顔を見せた。  そして、不意に死神の方へと視線を向ける。 「あれ? あなたは……死神ですね」 「え? は、はい! 死神の気配を嗅ぎ分ける事ができるなんて、やはり君は、冠付きの死神ですか?」  その問いに少年が頷いた。  この幼い風貌から、恐らくは優秀な死神としての素質があり飛び級で冠付きになったのだろう。 「僕は、飛び級で少し前に合格したばかりの新米冠付きです」  少年が、自身と彼の兄について語り出した。  少年の兄は心優しき死神で、もう随分長い間こちらの世界で初級試験に挑み続けていた。人間の事が大好きで、上手く不幸を与える事が出来ずにいつも失敗していたという。  その話を聞いた死神は、まるで少年の兄が自分の事のようだと驚いた。 「でも、三年前の雨の夜。兄は遂に、一人の人間を不幸にします」  プロポーズという人生の大切な瞬間を迎えた人間の頭に、鴉に変身した彼の兄が糞を落としたのだ。  そのエピソードを聞いた死神と帳は驚き、視線を合わせて頷いた。  間違いなくこの少年の兄こそが、帳珈琲店の『貼り紙』のきっかけとなった死神だ。 「罪悪感でいっぱいだった兄に、こちらのマスターが優しく話を聞いてくれたとの事で、兄は大変感謝しておりました。そしてこの帳珈琲店で、人間の食すオムライスを初めて食べたのだと僕に聞かせてくれました」
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