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帳がフライパンを振ると、鶏肉、玉ねぎ、白米にケチャップが混ざり、踊るようにチキンライスが出来上がっていく。
「ここに、少しのすり下ろしニンニクと醤油を入れて味にコクを出します。それから、溶き卵には珈琲店らしいあるモノを入れるんです」
なんだろうと考えていると、帳が正解を手に取った。
「コーヒークリーム(コーヒーミルク)です。油分が加わり、とてもまろやかな卵になりますよ。この溶き卵に更に一手間、これを使うと……」
細かい目のザルを手にした帳が、溶き卵をザル越しする。
「舌触りが最高に滑らかな卵になります。見た目は昔ながらのオムライスですが、ちょっとした手間をかけるのが美味しさの秘訣だと教わりました」
「すごいですね。やはり人間の料理は、魔法の調合をしているみたいです!」
死神はカウンターから身を乗り出して、帳の手元を眺める。調理の中でも卵を火にかける瞬間が、一番見ていてワクワクすると死神は思っていた。
チキンライスとは別の温まったフライパンに帳がバターを滑らせると、ジュワッと溶け出し美味しい匂いと音を響かせる。そこに、先程の溶き卵が勢いよく注がれた。
左手でフライパンを小刻みに動かしながら、右手に持ったお箸でくるくるとかき混ぜ焼いていく。
その上にチキンライスが乗せられて、帳がフライパンを前後に振動させると、本当に魔法のように卵がチキンライスを包み込み丸まっていった。
「どうして、そんな形になるのですか?」
料理ができない死神には、やはり魔法としか思えない。滑らかで美しい卵に包まれたオムライスが、お皿の上に乗って死神の元へやって来る。
「黄色って、元気が出る色ですよね」
雅也のお見舞いの花を黄色にしたのも、そう思ったからだ。
「ケチャップで、ここに死神さんの好きな絵を描いて下さい」
帳からケチャップを手渡される。
「で、でも! 私では、うまく描けないような気が」
「うまく描けても、描けなくても。味は保証するので大丈夫です。ちなみに、それを僕が食べます」
「え?」
「今から作る方が死神さんの分なので、こっちには僕が絵を描きますね。相手に送りたい絵を描いて交換するのも、昔ながらのオムライスだからできる楽しみです」
「なんだかオムライスを使った絵手紙のようですね!」
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