6人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
プロローグ
あの子が神に愛された子だというのは、もうすっかり誰もが知っていたことだと思う。
あぁ、でも、この言い方はちょっと古いか。古いよね。だって、ここは”そういう学校”でもないし、死後の世界よりも現世の方が大事だってネットだってテレビだってみんな言ってる。
だから、みんな内心薄気味が悪いと思っているあの子のことを避けた。イジメとか差別にならない程度にね。グループに一緒に誘ったり、会話を自分達からはしないようにしたりとか、そんなよくある仲間はずれ程度のもの。かわいいでしょ。
あの子は学校でも、街でも、ずっと焦点の合わない目でどこかを見ていた。お話だって、他の子の半分ぐらいしか通じない。
じゃあ、わたしは?
大人達はいつもあの子の隣にわたしを置きたがった。わたしね、あの子のこと嫌いじゃない。けどね、好きでもないの。
だけど、わたしはいつだって、わたしの意思なんて関係なしにあの子の傍に置かれていた。
わたしは彼女の手を握る。仕方ないよね。
わたしがきっと、彼女の手を握る最後の手だから。
最初のコメントを投稿しよう!