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そうやって迎えた日のお昼休みに入ってすぐのことだった。 個人用のスマホへの着信にちょっとした胸騒ぎを感じた。 着信はなんてこともない母からのものだったが、母は私が仕事上、昼休みの時間が定まらないことを承知していて、昼間は滅多なことがない限り電話を寄こさない。 それに、お互いの安否確認や日常の会話は平日であればメッセージで済ますことがほとんどで、電話をするのはもっぱら休日だった。 「もしもしお母さん? 何かあったの?」 そんな母が昼間に電話をしてきたものだから、私は開口一番にそんな聞き方をしてしまった。 しかし、そのことでさえも母の予想できる範疇のものであったのだろう。 「仕事中にごめんね」と前置きをした後で、「”何か”ってわけでもないんだけど…望愛には知らせておいた方がいいと思って」と意味深に切り出した。
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