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母からだいたいの話を聞き終えた頃、不在だった室長が秘書室に戻ってきた。
「…わかった。何かわかったら私の方から連絡するから、お母さんは心配しないで。おばさんにもそう伝えて」
私は小声のまま早口に言うと、電話を切った。
「…電話、お母さん? 何かあったのか?」
母からの電話なんて会社で受けたことがないので、室長にも心配させてしまった。
なんでもないと返事をすると、室長は「何かあればすぐに言うんだよ」といつもどおりに気遣ってくれた。
「…お昼、行ってきますね。今日は祐子ちゃんと約束してるんです」
「ああ、そうだったね。祐子も楽しみにしてたよ。君とはすっかり姉妹みたいだね」と、室長は先程よりも明るく笑った。
室長の言うとおり、祐子ちゃんとはプライベートでも随分仲良くなり、一人っ子の私にとっては本当に"妹"のような存在になりつつあった。
普段は昼食の時間が前後にずれ込むこともあるが、今日のように渉さんが社外に出ているとそうなることもほとんどないので、そんな日は一緒に昼食をとることもあった。
…早くしないと祐子ちゃんのこと待たせちゃう。
秘書室を出ようとすると、私のデスクの内線電話が鳴った。
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