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「言い忘れてって…」
…なんだろう?
「それを望愛から一番に聞きたくてここに来たのに」
「ん?」と雅也君はさらに顔を近づけた。
「あ…」
もしかして…
「…おかえりなさい…」
その言葉が正解だったらしく、雅也君は私の頭に手のひらを置くと、
「ただいま、望愛」
とニコリと微笑んだ。
「…ビックリしすぎて…言うの忘れてた…」
私はそんな言い訳をしたが、雅也君はそれさえも喜んでいるかのように満足気な表情だった。
昔からしっかり者のお兄ちゃんだったはずの雅也君が子供っぽくって可笑しかった。
「雅也君、私からそれを聞くためだけにわざわざ先に私に会いに来たの?」
私は笑ってしまったが、雅也君はなぜか真面目な顔で私を見つめ、数秒後に口を開いた。
「それだけでも来る価値はあったけど、そのためだけじゃない。望愛を連れて帰るために来たんだよ」
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