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室長にとってはある意味、印象深い相手だったはずだ。室長はすぐに雅也君の存在に思い当たった。
「…はい。その男性です…」
室長にあの時の状況を思い出させるだけで、なんだか申し訳ない気分だ。
あの時、雅也君はまるで室長が無理やり私を連れて行くかのように誤解して、室長に敵意を剥き出しにしていた。
私の方も母が快く賛成してくれたこともあって、それなのにどうして雅也君が反対するのかわからず困惑していた。
「来客って…その彼のこと? 確かあの時アメリカに行くとか…」
「はい、アメリカから戻ったんです」
「たった今」と私は付け加えた。
普段は滅多なことでは驚いたりしない室長もさすがに目を丸くしている。
「それで…どうしてここに?」
室長も私と同じ質問をした。当然そう思うだろう。
でも、それに答えることはできなかった。
"…私を…連れて帰るため…"
雅也君はそう言ったけど、結局さっきの短い時間ではその意味もよくわからなかった。
「…どうしてでしょうね…?」
私はまるで室長に答えを求めるように首を傾げてしまった。
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