はじまり

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実はボクは一ヶ月前に新たなスケベ神に就任したばかりだったんだ。ボクの仕事は人間たちのセックスのお手伝い。スケベハプニングでムラムラを起こしてセックスする流れに持っていかせたり、性癖の似ている人同士を巡り合わせたりするわけだ。そうすることで人間たちの高まったスケベ心がボクの活力にもなるわけだ。ご飯みたいなものだね。でもボクはまだ未熟。失敗ばかりでね。この間なんかセックスの前戯中の男にもっと興奮するおまじないをかけてあげようとしたら間違えて勃起しなくなる魔法をかけてしまって、結局そのカップルは喧嘩して別れてしまった。そんな失敗ばかりでなかなかうまくスケベ心を起こせなくて、ボクの力も弱まって余計にうまくいかなくなる悪循環。そして3日前にスケベ大神様から「あと一月猶予をやるが、それまでに役目を全うできなければ神界追放と心得よ」と宣告を受けてしまった。このままだとボクはスケベ神をクビになって消えてしまう。 「…というわけなんだ」 「百お前が悪いじゃねぇか」 「まぁまぁそう言わずに。可哀想なボクのためにお手伝いして欲しいんだよ」 「なんで俺なんだよ」 「それはね、ボクのスケベセンサーがキミに向かってビンビンなんだよね」 「気色悪い言い方すんな」 「なんだかキミの周りにはキミのことを気になってる人が多いような感じなんだよねぇ。ボクのセンサーがそう告げているんだ」 「はぁ?」 エレックの言葉に西島は眉を顰める。 (気になってる?俺の周りの奴らが俺のことを?) 「いやないだろ」 自分の周りは男だらけ。女子とは接点があまりないし、自分が気にかけられる理由がわからないと西島は思った。 「いやいや。キミに自覚がないだけでいろんな人に想われてるんじゃない? キミって顔もカラダもなかなかかっこいいし、陰でモテてるタイプだと思うよ」 「………」 「もしかしたら不慮のアクシデントで女の子に押し倒されちゃって、「キャッ♡西島くんってこんなにイイカラダだったのね♡かっこいい…抱・い・て♡」なんて展開になるかもしれないよ」 「アホか」 「というわけで…ビンビンビコビコビンビコビンッ!」 「っ!?」 突如エレックが西島に向かって手を翳し、そこから眩い光が放たれる。眩しさに目を瞑った西島が次に目を開けた時には、エレックの姿はなかった。 「!、おい!どこ行きやがった!ほんとにまじないかけたのか!?」 『ごめんね。今のボクは力が弱まってるせいで魔法を使うとしばらく姿が出せないんだ。とにかく、ボクの生存のためにたくさんスケベしておくれ!童貞卒業できるといいね!ファイト!』 「はぁ?おいふざけんな!おいっ!」 呼びかけても反応がなくなってしまい、西島は舌打ちして溜め息を吐いた。 「………アホらし」 そう吐き捨て、勢いよく布団に寝転がる。 (なんか無駄に疲れたわ…。何だったんだアイツ) 横になるとすぐに睡魔が襲ってくる。そのまま西島の意識は沈んでいき、眠りに落ちていった。 この時、西島はまだ自分の身に起きたことの重大さにはちっとも気付いていなかった…
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