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加地×西島編−1−
翌朝。目を覚ました西島は大学へ行く準備を始めた。その頃にはもう、昨日のことはスッポリ頭から抜け落ちていた。
通勤、通学ラッシュの時間を少し過ぎた、人のまばらな電車に乗り込む。 適当な場所に座った西島は、スマホを取り出し知り合いのSNSを見たりして時間を潰していた。
しばらくして次の駅に到着のアナウンスが流れ、西島の前の席に座っていたジャージを着た青年が立ち上がろうとした。おそらく次の駅で降りるため、先に立ちあがって待っておこうとしたのだろう。しかしその時、電車が大きく揺れ、青年がバランスを崩す。
「うわっ…」
「っ!?」
前方に大きく倒れ込んだ青年は、そのまま西島の股間に顔面ダイブしてしまった。
「すっ!すいませっ…」
謝りながらもう一度立ち上がろうとした青年だったが、再び電車が揺れる。
ガタンッ
「ふぐっ」
「ちょっ…」
揺れによって転んだ青年は、再び西島の股間にダイブ。なんだか変な気分になってしまった西島は、青年の頭を掴み無理矢理引き離した。そうこうしているうちに、電車が目的地に着く。
「ごっ、ごめんなさい、ほんとに…」
顔を真っ赤にして謝ってきた青年に、同じく真っ赤な顔の西島は何も言えず無言でぶるぶると首を横に振った。
「ほんとにすみませんでした!」
もう一度謝った青年は、バタバタと駆けて電車を降りて行った。それを唖然としながら見送った西島の頭に、昨日のことが過ぎる。
「………」
“ラッキースケベのおまじない”
(…い…いやいや、まさかな…。偶然に決まってんだろ。しかも今のはどう見ても男だし…)
頭でそう否定しながらも、西島は何かとても嫌な胸騒ぎを感じていた。
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