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大学に着いた西島。校舎に向かい歩く背中に声がかかる。
「セイちゃん!」
振り向くと、大柄な青年が小走りでやって来るところだった。
「勇吾」
「おはよ、セイちゃん」
ニコニコと笑いながら隣に並んできたのは、西島の中学からの親友である加地勇吾。
身長188cmと大柄だが、とても温厚で優しい心の持ち主。
背が高いだけでなく体格も逞しいため、周囲からは熊のようだと言われている。
「おはよ」
「…セイちゃん、何かあった?」
少し元気のない様子の西島に、加地は首を傾げて訊ねる。言われた西島は、慌てて首を横に振った。
「あ、いや別に。何でもねぇよ」
「…そう?」
釈然としない様子の加地だったが、それ以上追求はせず隣に並んで歩き出した。
「あ、それよりさ、遊佐先輩のインスタ見た?」
「あ、見た見た。あれってさぁ…」
他愛もない話をしながら校舎に入り、階段へと差しかかる。二人が登っていく向こうから、1人の生徒が何やら急いだ様子で階段を駆け降りて来た。
そしてすれ違う瞬間、その生徒と肩がぶつかり西島の体がバランスを崩して後ろに傾く。
「へ」
「っ!セイちゃんっ!」
咄嗟に西島の手を掴んだ加地だったが…
「うわっ…」
『わぁあああっ!!』
自分も足を踏み外し、2人は一緒に階段を転げ落ちてしまった。
「っ…てぇ~。何だよクソッ…」
「だ、大丈夫?セイちゃん…?」
「あ、おう…悪い…」
西島は仰向けに倒れた加地を下敷きにうつ伏せで倒れてしまっていた。起き上がろうとした西島だったが、なぜか床ではなく加地の胸に手をついて体を起こそうとしてしまった。
「はうっ」
胸を鷲掴みにされ乳首を潰された加地は、思わず上擦った声をあげてしまう。
「わ、悪いっ」
(何やってんだ俺!)
慌てて床に手をつき直した西島は急いで立ち上がった。しかしその時、背後から突然悲鳴が響く。
「うわぁっ!」
「へっ、おわっ!」
「んぶっ!?」
後ろから階段を降りて来た生徒が足を踏み外して転び、西島にぶつかってしまったのだ。しかも転ぶ際に西島のズボンを掴んでしまい、ずり下ろしながらボクサーパンツ越しの尻にダイブした。更に前に倒れた西島は、今度は股間を加地の顔に押しつける形になってしまった。
「す、すいませんっ!」
よほど急いでいたのか、一言謝るとすぐに立ち上がって走り去って行く生徒。西島はというと、突然の出来事に放心して固まってしまっていた。
「ん゙~!」
顔を股間の下敷きにされた加地は、呻きながら西島の腰を叩く。
「…はっ、あ、わ、悪いっ」
我に返った西島は、再び立ち上がろうとする。しかし、膝下までずり下がっていたズボンの影響で上手く立てず、今度は後ろに倒れてしまった。
「っわ」
「ぃ゙ぎっ!」
加地の股間の上に西島の尻がのしかかり、蛙のような呻き声があがる。
「あっ!マジでごめんっ!」
体勢を立て直そうとして身じろぐ西島だが、必然的に尻で加地の股間を擦るように刺激してしまう。
「ぅっお゙っ」
ビリビリと体に快感が走り、濁った喘ぎのような声をあげてしまう加地。その手が弱々しく西島の腰を叩く。
「せ、セイ…ちゃ…早く、どいてっ…」
「あ、あ、ほんとにごめんっ!」
今度こそ立ち上がってズボンを履き直した西島。しかし、脱力してすぐに加地の隣にへたり込んでしまう。
「はぁ…はぁ…」
(なんだよ今の…なんかおかしいだろこれ…!)
青褪めた顔で蹲った西島。不意に隣で上体を起こした加地に目をやると、すぐに何かを隠すように体を前に折り曲げ蹲った。
その様子を怪訝に思い、遠慮がちに声をかける。
「ゆ、勇吾…?」
「………」
「なぁ、大丈夫か?」
西島の呼びかけに、加地は無言でのろのろと立ち上がった。
「勇吾…」
「トイレ…行って来る…」
「え、あ…」
そこで西島は、先ほど加地の体に乗ってしまっていた時に尻に感じた感触を思い出す。何か硬いモノが当たっていたような気がしたが…よく考えなくとも、同じ男なのだからそれが何かは分かってしまう。
(あれって…アレだよな…。あいつ…大丈夫なのか…?)
不可抗力とはいえ加地を辛い状態にしてしまった責任を感じた西島は、前屈みでヨタヨタと歩いていくその背中に声をかけた。
「ゆ、勇吾!…ごめん俺…その………て…手伝おう、か…?」
その申し出に、加地は目を見開いて西島を見返した。
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