第二章 奇跡の石

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 そんな日々を続けていたある日、フィオレは課題を解くのに夢中になってしまっていた。その間にオルディアの肉体は完全に眠りに落ちていたが、彼女は気付かなかった。 「ああ、ここ違うよ」  不意に上から声がしてフィオレは顔をあげる。オルディアはベッドを出ることができないから上から声がするはずがない。そこに立っていたのは赤い目のオルディアだった。隠す気さえないのかサングラスをかけていない。 「あら、出てきちゃったのね」 「うん。残念ながらまだ統合されてなくてね」  オルディアはくすくす笑ってベッドの柱に寄りかかり、彼の身体を指さす。 「急いで僕を起こさなくていいの?」 「あなたと少し話したいの」  彼は驚いた顔をして髪を耳に掛ける。赤いバラのタトゥーがあらわになった。 「僕は話すなって言ってなかった?」 「言ってたけど、聞きたいことがあって。あなたなら話してくれそうだし」 「ん、そだね。僕は良くも悪くも正直だから」  オルディアはまたくすくすと笑って長い髪を指に絡める。オルディアはもともと落ち着きがないと思っていたが、赤い目のオルディアはその比ではない。それによく笑うが、どこか冷たくて不気味なのは否定できない。黒い服が本来のオルディアではないと余計に際立たせるようだ。 「人間が嫌いっていうのはあなたにとって共通の認識なの?」 「そだね。魔法使いっていうのは人間の守護者でもあるんだけど、恩寵に預かる人間が恩を知らずに刃を向けてきたら愛していられるかって言われたらノーだよ。見て」  オルディアは眠っている肉体の服をまくり上げた。薄い身体だが胸にわずかに膨らみがあるのは両性具有だからだろう。なにより目を引くのは無数の大きな傷跡だ。やけどのような痕もある。腹の大きな傷跡はまだ変色していて痛々しい。赤い目のオルディアはひときわ大きい胸の傷を指さした。 「矢を射こまれて膝をついたところを槍で一突き。すっごく痛かった。その時抱っこしてたノールリースは僕の腕の中で死んじゃった……一緒に死んじゃいたいって思ったけど僕は不死だから死ねなかった。仲間の魔法使いたちはそんなことになる前に人間の愚かな願いを聞いて次々と消えて逝った。僕は逝き損ねて、化け物扱いされて、あまつさえ時代遅れ……」  オルディアはため息をついて傷痕をなぞっていく。 「長い年月の間に人間を守護する意味はあるのかって何度も考えた。この八百年くらいは特にね。君を匿っているのだって人間たちの安寧のためでもある。なのに人間はミサイルを撃ち込んで君も一緒に殺そうとした。ああ、なんて愚かな人間……たかだか百年も生きない人間をどうして僕は大切なものを失いながら守らなきゃいけない? わからない。わからないよ……」  オルディアが泣いている。なぜだかそう感じた。小さなオルディアはこのオルディアを悪い自分と形容したが、このオルディアこそ本心を語っているように見える。偽らざる本心を語ってくれるのはこのオルディアだけだ。そう思ったのは間違いではなかったらしい。 「でも、僕の半分は愛したいって心だけでできてる。素直で純粋でおかしいくらい善良。だけど、ううん、だからこそ疲れちゃってるんだ。早く終わらせてあげたいなって思う」  赤い目のオルディアは眠っている肉体を愛おし気に抱きしめる。 「『僕』はかわいそうなんだ」   フィオレは涙が頬を流れるのを感じた。オルディアのサングラスに付けられた涙の飾り。失ったものの象徴。きっと泣きたいのに泣けないオルディア。 「どうしたらあなたを終わらせてあげられるの?」 「人間には無理だよ」  彼はやさしく微笑んで涙を拭ってくれた。 「フィオレ、君のことは大好きだよ。久しぶりに楽しいんだ。だからそばにいてね。僕のために泣いてくれてありがとう。もう出てこないよ」 「待って」 「なに? そろそろ覚醒しそうなんだ。怒ってるみたい」  彼は眠っている肉体をちらりと見ながら言った。精神体が勝手に活動していることを感知できないわけではないらしい。 「キスしてあげてもいい? あなたの心が少しでも穏やかになるように」  彼は口元を手で隠してくすくす笑う。 「君って本当にかわいいね」  彼に突然抱き寄せられて唇を奪われた。フィオレが真っ赤になるとオルディアはまたくすくすと楽しそうに笑った。 「ファーストキスもらっちゃったー!」  何も言えないでいる間に彼は消えてしまった。言葉通りなら赤い目のオルディアは姿を現さないだろう。 「なにそれ!」 「なんかゴメン……」  思わず叫んだ直後にベッドから気まずそうな声が聞こえた。フィオレは真っ赤になった顔を両手で隠す。オルディアと彼は同一の存在だから何があったか知っているのだろう。 「グランディを呼んでくる!」  フィオレは逃げるように部屋を出て行った。 「なんてことをしたんだ、僕……」  その呟きは誰にも聞かれずに消えた。 「絶対誤解されてるよね」  オルディアは盛大にため息をつく。かなり正直な側面の自分がフィオレのファーストキスを奪ってしまったが、彼はそういった感情を持ち合わせていなかった。幼いころから大切に守り育んだ少女にそんな感情を抱くはずがない。あのオルディアもからかいでしかなかった。動揺させたいという正直すぎる振る舞いの結果だ。  確かに少々こじれた感情を抱いてはいるが、それはノールリースと彼女の姿を重ねてしまうせいだ。守り切れなかった自分への苛立ちと失ったものへの憧憬。そして罪悪感が複雑に絡み合っている。 「だろうな。さっさと話してやった方がいいんじゃないか?」  グランディにこともなげに言われて、彼はまたため息をつく。グランディは比較的人間の感情の機微を理解するほうではあるが、成長過程での心の変化には疎い。仕方ないことはわかっているが、そう簡単に割り切れるものでもない。 「フィオレは難しい年頃でこれ以上傷つけたくないし、僕から仕掛けたのにあの子が悪くてフったみたいになるの申し訳なくて」 「一理ある。フィオレはお前の想像以上に思いを寄せているようだしな」 「え? なんか知ってるの?」 「フィオレのお前への避けぶりを見て察しない方が難しいが?」  確かにあの日以来、フィオレが用事以外でこの部屋を訪れていない。以前はよく雑談をしに来たのにまったくといっていいほどなく、ワークのわからないところを聞きに来るだけだ。うっかり手が触れたら真っ赤になって逃げられたこともある。 「それもそか。フィオレの思いを無視したいわけじゃないし、大好きだから余計に困る」  その大好きがいつからフィオレとオルディアで違ってしまったのかわからないが、まだ今なら戻れる。そんな気もする。 「フィオレは賢い子だ。ちゃんと向き合ってやればわかってくれると思うが?」 「そうだろうけど、これ以上我慢させたくないとも思うんだよね。僕らのために命を投げ出すことをまだ考えてるみたいだし……あの子は僕の運命に巻き込まれちゃっただけなのに……」  精霊たちにフィオレをできるだけ一人にしないように頼んではいるが、以前よりずっと一人になりたがると聞いている。死ぬことを考えている可能性を否定できない。まだまだ子供でそんなことを考えてほしくないが、悲惨な姿を見せてしまった以上、避けられない道ではある。 「なら、恋人ごっこでもするのか? 偽だと気づかれれば余計に傷つけるだけだ」 「ゴモットモデス」  グランディは岩のように大きな手でオルディアの金の髪をきれいにまとめて結う。精霊たちが彼の髪を結うのは親愛の情だ。 「リル・オルディア、永く生きていると時の流れがあいまいになるが、フィオレはまだ幼い。早く話してやらないと余計に傷つける」 「わかってるよ。フィオレを呼んでくれる?」 「ああ」  できるだけ早く向き合わなければいけないことはわかっている。すでに一週間ぎくしゃくしているのだ。これ以上長引かせていいとは思えない。 「話って何?」  部屋から出てきたフィオレはひどく不機嫌そうだった。近頃パンク風の服を着ていることが多いから余計に強調されて感じる。ここずっとそんな調子で用がなければ近くにさえ来てくれない。彼女の気の強そうな水色のつり目に短い髪が頬のあたりで揺れる。幼いとばかり思い込んでいたのにいつの間にかずいぶんと大人びた。 「誤解させただろうことを話したくて……」 「赤い目のオルディアとじゃなきゃ意味ない」  その言葉に彼は目を伏せる。フィオレの言いたいことはわかるが、これ以上話をさせたくない。 「彼も僕の一部でほとんど統合されたから出てくることはもうない」 「じゃあ、なんでまだ無理して起きてるの? 本当は統合されたわけじゃないんでしょ?」  フィオレに澄んだ水色の目で見つめられてオルディアはため息をつく。本当に賢い子だ。 「君に隠し事が難しいのはよくわかったよ。確かにまだ呼び起せる。でも、あの僕は正直すぎて君にも僕にも悪影響なんだ。赤い目の僕と話して僕を憐れまなかったって言えるかな? いっそ死なせてあげようとか考えなかったって言える?」  彼女は唇を噛んでうつむいた。そう思ったことを否定できないのだろう。あの日、フィオレはどうしたら終わりを迎えられるか聞いてきた。そのことを彼女もオルディアも覚えていて今の言葉をどうして否定できるだろう。 「僕は虹の魔法使い。悠久の時を越え、夢を渡るもの。精霊たちの主にして人間の守護者。人間に想像しきれるほどちゃちな精神してないんだ。確かにつらくて死にたいと思って百年くらい寝てたこともあるし、この前みたいな事件起こしちゃうこともある。けど、僕はちゃんと戻ってきた。今の僕は君を、世界を守るためにある。死が救いだなんて思ってない。だから、これ以上赤い目の僕と君に話をさせるわけにはいかないんだ。赤い目の僕も僕自身で記憶も感情も意識も完全に共有してる。だから、この話は僕からする。それでわかってほしい」  フィオレはゆっくりと頷いた。 「僕は君にキスをしたけど、恋愛感情というものを僕は持ち合わせていない。君を困らせたくて、覚えていてもらいたくて意地悪でしてしまったことだ。本当にゴメンね。許してくれなくてもいいから、これまで通りに過ごせるようにしたいんだ」  突然ぶつかるように抱きつかれてオルディアはベッドに倒れる。 「わぁっ」 「別に許すとか、許さないとかじゃないの。オルディアが私のこと妹とか、娘とか、そういうのだとしか思ってないのはわかってたし。だから別にキスされたことに怒ってたんじゃないの。オルディアが辛い思いをしながら私を守ってくれていることが申し訳なくて、苦しくて、頭がこんがらがっちゃっただけなの」 「そか……なら僕もファーストキスだったからおあいこってことで」 「なにそれ」  フィオレはくすくすと笑った。関係が壊れずに済んだことにオルディアは安堵し、フィオレをぎゅっと抱きしめる。胸の奥がほっこりとあたたかくなった。素直でやさしい子に育ってくれていることがうれしい。 「フィオレ、君のことが大好きだよ。使命を抜きにしても君と過ごす日々は特別で幸せなんだ。妙案が浮かぶまで家族ごっこに付き合ってくれる?」 「うん。妙案が浮かんでもオルディアはお兄ちゃんってことにしておいてあげるから安心して」 「あれ? パパじゃなくなったの?」  数年前にはオルディアがパパだったらいいのにと言ってもらえて喜んだ記憶があったが変わったらしい。 「オルディア老けないんだもの。こんな若い顔のパパいないって」  オルディアは二十代前半の若者にしか見えない。幼いうちであれば若い父親に見えないこともなかったかもしれないが、それなりに大きくなった今ではどう見ても年の離れた兄程度だ。 「なるほどね」  突然抗いがたい眠気に襲われて、オルディアはフィオレを押し返す。これは危険だ。 「ちょっと、ヤバ、イ……」  フィオレが戸惑ううちに彼は眠りに落ちた。彼の身体から抜け出すように赤い目のオルディアが姿を現す。 「やあ、僕だよ」  彼はくすくす笑いながら手を振った。 「もう出てこないんじゃなかったの?」 「おや、ご挨拶だね。気が変わったんだ。『僕』がきれいごとしか言わないから僕の本心をちゃーんと話しておこうと思ってね。『僕』は確かに僕だけど隠し事が多すぎるから」  赤い目のオルディアはくすくすと笑いながら眠っている肉体の首に手をかけた。その目がゆっくりと嫌悪の色をはらむ。 「僕は君が……」 「やめろ!」  目をカッと見開いたオルディアが払いのけると赤い目のオルディアはふっと消えてしまった。彼は肩で息をしながら乱れた衿を整える。 「ゴメンね。だいぶ不安定みたい」 「赤い目のオルディアは私が嫌いなのね」  オルディアは言葉に詰まる。突然のことに抗い切れなかった。分裂した自分の自我がこれほど強い力を持っているとは思わなかった。そして短い会話でこれほどフィオレに影響を与えてしまったことも予想外だった。あまりにも想定を超えている。フィオレが胸に秘めた奇跡の石が影響を及ぼしているのだろうか。 「私がいなきゃこんなことしなくていいんだもの。当然よね」  フィオレが胸を押さえるのを見て、ぎりと唇を噛む。まだ十二の子供にこんなことを思わせたくなかった。すべて洗いざらい話して納得させるしかないだろう。これ以上隠し事を続ければ関係を壊してしまうだけでなく、フィオレを永遠に失ってしまうかもしれない。 「フィオレ、もう隠し事はしない。全部話すから聞いてくれる?」  フィオレはしばらく迷っていたが、頷いた。 「赤い目の僕は欲望に忠実で、潔癖、合理主義なんだ。だから、合理的じゃない守り方をしてる僕に腹を立ててる。さっきも本当に守りたいならねじ伏せてみろって強引に分離した。僕は君と同じ境遇の少女を守り切れずに死なせてしまっているから僕は今もそのことを責めてる。僕はノールリースを特別に思ってた。赤ちゃんの時から育てたし、すべてが嫌になって凍り付いてしまいそうだった僕の心を温めてくれた子だったから……」  ノールリースのことを思い出そうとするとすべてがぼやけているのに、胸が耐え難いほど痛む。けれど、ほんの少しだけあたたかいのは幸福な日々を彼女がくれたからだ。 「初めて人間に愛されて、無垢な笑顔を向けられて、僕は自分の力を過信した。ノールリースが欲しがるものは全部与えてあげたくて、わがままを全部聞いた。結果死なせた。苦い思いと強い憧憬と愛がこの胸に残った。強い感情は時として憎悪に変わる。たぶん、なんらかの感情を失ったのも影響したんじゃないかな。以来僕は奇跡の石を憎んでる。奇跡の石が存在しなければ君のような子が苦しまずに済むのに、僕もこんな思いせずに済むのにってどうしても考えちゃう。君が大好きなのに、嫌いと思う『僕』がいるのはそのせい。だから、誤認しているだけで、君のことは大好き。これだけは信じてほしい」  フィオレはうつむいたまま何も言わない。考えているのだろう。複雑に絡み合ったオルディアの心を理解するのは簡単ではない。それはわかっている。  あの日、感情のままに神に盾突き、世界を滅ぼそうとした彼は魔法の代償のみならず、多くのものを神に奪われ、百年の長い眠りについた。彼自身もわからないことが多いのはそのせいだった。  オルディアは長い髪をかき上げ、ゆっくりと息を吐きだす。このことも話さなければ赤い目のオルディアは納得しないだろう。彼ではなく、自分自身の口で話すべきなのはわかっている。 「フィオレ、君に奇跡の石が宿ったのは僕のせいなんだ」 「え……」  彼はフィオレの顔が見られなかった。 「黙っててゴメン……君が生まれた日、神に呼び出されたんだ。僕に終わりをくれるって神は言った。僕はもう時代遅れで人間の守護者としては力不足だから君を守り切れたら終わりだって……だから、君に奇跡の石が宿ったのは僕のせいなんだ! そんな君を僕が守るのは当然のことで君に罪悪感を抱かせる前に僕のせいだと言わなきゃいけなかったのに、君に嫌われるのが怖くて言えなかった。ゴメンね……許してなんて言えない……」  胸が痛い。息が苦しい。きっとフィオレは軽蔑するだろう。もう家族ごっこなんてしてくれないだろう。 「フィオレ、今後は僕と会う必要はないよ……好きなだけわがまま言ってくれていいし、君の望みはなんでも叶える。これまで通り守るから……全部、僕のせいだ……」  唐突に両手で頬を引っ張られた。 「いはい」 「勝手に結論出して落ち込まないで」  きりりとした水色のつり目でじっと見つめられて、オルディアは目をそらす。 「ゴメン……」 「奇跡の石を宿す赤ちゃんを選んだのはオルディア?」 「違うよ」 「奇跡の石を作ったのは?」 「神……たぶん……」 「あなたが襲撃やミサイル攻撃を指示した?」 「違う!」  フィオレはふわと笑ってもう一度両手で彼の頬を思い切り引っ張る。 「全然あなたのせいじゃないじゃない」  頬は痛いが胸があたたかいもので満たされていくのを感じた。許されないと思った。恨まれても仕方がないと思った。だが、フィオレは彼のせいではないと言ってくれた。 「ねぇ、待って? 私を守り切れたら終わりって私が死んだらオルディアも死んじゃうってこと?」 「かな? わかんないや。神とはあんまり話したくないからちゃんと聞いてなくて……」 「はーもー、取扱説明書読まないだけじゃなくて人の話も聞かないのね」 「ゴメン……」  フィオレはぐっと伸びをした。 「たくさん悩んだのにバカみたい。ねぇ、オルディア、私に奇跡の石が宿ったのはあなたの運命を変えるためなんだよ、きっと。だから、二人でちゃんと悩んで私が死ぬまでに答えが出ればいい。だって、ここにいれば安全なんでしょ?」 「うん、でも……」 「でもはいいの。オルディアは私をちゃんと守ってくれた。隠してたことはそれで許してあげる」  オルディアはなんと言ったらいいのかわからなくなり、曖昧に笑う。 「私ね、あなたがパパの裏切りを暴露したあと、ショックでしばらく何も考えられなかった。でもね、不思議とそれほど悲しくなかったの。最近じゃどうでもよくなっちゃったくらい。けど、オルディアに嫌われてるんだって思ったとき、死んじゃいたいって思った。それくらいオルディアが好き。つまり……つまりね! あなたにどんな事情があっても私が好きって思ってくれるならそれでいいの。大好きよ、オルディア」  花のように笑ったフィオレの頬に思わず触れる。いつの間にこんなに大きく成長したのだろう。これほど無垢で真っすぐな思いを向けられたことがうれしくて、胸の奥がほっこりとあたたかいものでいっぱいになった。 「僕もだぁい好きだよ、フィオレ」  フィオレに抱きつかれて、ぎゅっと抱き返すと胸の奥に火が灯った。運命に選ばれた子がフィオレだったことがこの上ない祝福に思える。   
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