Act.1

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Act.1

 私は観察者。  その名の通り、ある世界の観察をする存在。  一度にその世界の無数の場所を観察している。 「キュイ」  しかし、世界に干渉することは出来ない、私は神ではないのだ。 「キュイキュイ」  そして、その世界の者も私の存在を認知できない。  私は…… 「キュイキュイキュ~イ!」  あ~ッ、ウルサイな! 人が気持ち良く自己紹介しているのにッ! 「キュイ?」  え? 誰にって……そりゃ、読者に……って、おまえは知らなくてイイの!  あ、読者の皆様、大変失礼致しました。さっきから「キュイキュイ」うるさいのは柴犬のウリエルです。 「ガウガウ!」  はいはい、わかったよ。  訂正します、柴犬ではなく、柴犬っぽい使い魔です。  で、先程も言った通り、この世界のものは私を認知できないはずなのに、こいつだけは何故か私の声を聞くことができる。恐らくこの世界のバグか、もしくは創造主の大いなるイタズラでしょう。 「ガルルル!」 「ナニ、独りで騒いでいるの? 退屈なのはわかるけど、声が響くから静かにして」  ウリエルの主である魔術師の少女、リアーナが形の良い眉をひそめた。彼女たちは今、監房の中にいる。 「キュイキュイキュ~」 「また神さまとお話ししてたの? 好きにしていいけど、もう少し静かにして」 「ウゥ~」  や~い、叱られた!  …………………度々失礼、観察者として大人げない姿をさらしてしまった。それと、クドいようだが私は神ではない。  さて、なぜ彼女たちが牢獄にいるのか、その経緯(いきさつ)を話そう。
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