指先に触れる愛

それから出会い。

3年という話だったので園山さんが帰って来る頃に合わせて会社を辞めた。けれど帰国直前になって予想外のアクシデントが現地で発生したとかで、帰国は延期。宙ぶらりんのまま毎日を過ごしていたわたしがカフェのアルバイトを始めたのはそんなタイミングだった。

結局、園山さんが帰国したのは去年の年末で、更に帰国後しばらくは仕事が忙しいとかで会うこともなかった。

そして、仕事も落ち着いてきたようだし、そろそろ話を進めようと両家の両親が言い出したのが今年の夏。結納も交わして、婚約指輪もいただいた。結納返しは定番の時計。それが終わると両家の両親は「あとは若い二人で…」と、こちらもお決まりの一言を添えられてわたしたちは二人きりにされた。

わたしが園山さんと二人で会うのは今日で5回目だ。

1回目は平日ディナー、2回目は日帰りドライブデート、3回目にホテルに行って、4回目は…何したっけ？ああ、そうだ。園山さんの部屋に行ったんだった。

順調に、サイコロを振って歩く人生のように関係を持ったわたしと園山さん。そのサイコロすら振った覚えもないままに。

だから、そこには何もない。