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「食べられない物はありますか?」
食事前、園山さんは必ずわたしにそう言う。最初は素直にそれを受けとめて、素直に食べられない物を伝えていたけれど、これが毎回になるとわたしの答えも決まってくる。
「特に。」
たったの三文字。
だって、何度言っても園山さんは覚えてくれない。覚える気がないんだ。そもそも、わたしの答えを聞いていないんだから。園山さんはわたしが食べ残しているブロッコリーに気づいてそれを指摘したことが一度もないのだから。
きっと園山さんにとってこの言葉は食事前の「いただきます」の挨拶と一緒、形ばかりのココロ配り。だから、わたしが何を答えても興味がない。そしてわたしは作り笑顔を添えてこう言う。
「園山さんにお任せします」
だって、何を食べても同じだから。こうして向かい合って食事をしていても何の味もしない。だから、何を食べても同じ。
機械的に右手と左手を動かして、時々相槌を打って園山さんの話を聞いているフリをする。会話が途切れると園山さんはワイングラスを口に運んだ。
ワイングラスを持つ園山さんの手はどこか神経質で、その指に初めて触れられた時、わたしの体は熱くなるどころか冷たく凍りついてしまい園山さんを受け入れられなかった。
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