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コーヒーマシーンが豆を挽き、黒いコーヒーが白いカップに注がれる。その一筋の黒い滝を眺めながら、わたしは彼に触れた指先を握りしめた。
彼の手はとても冷たかったのに。触れた瞬間、弾かれるわけでもなく、まるで吸い寄せられるような電力がその指先から生まれたような気がした。こんなこと、初めてだった。
コーヒーと水の入ったコップ、それから念のためミルクと砂糖をトレイに載せて、わたしは彼の座るテーブルへ向かった。
「お待たせしました」
「ありがとう」
たった5文字。だけど、彼がその笑みを添えると何か特別な言葉のように聞こえてしまう。もっと彼の言葉が聞きたい。
「あの、アイスコーヒーじゃなくて良かったんですか？」
「あぁ、座って落ち着いたら汗が引いたみたいで。なんか寒いなって」
そう言って笑う彼の顔にはどこにも汗のアトなんて残っていないように見えた。むしろ、涼を感じる。
彼は目を落としてマグカップに指を添えた。わたしの胸がまた高鳴る。さっきわたしに触れた指。そんなに冷たい指を持ちながら、熱いコーヒーを飲む彼。
――…ヤケド、したりしないのかな。
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