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「ま、ま、まもちゃん!声大きいよ!」
わたしは慌てて腰を浮かしてまもちゃんの口から出た言葉を揉み消そうとした。もちろん無理だけど。できっこないんだけど。
それからまた周囲の視線を気にしながらイスに座り直した。
「あ、ごめん」
と、謝ってはくれたものの、まもちゃんの顔はぽかんとしていた。それから、
「映画に誘われたって、園山さんに?」
そこでわたしはまたもや返事に詰まる。その反応でまもちゃんは、ピンときたらしい。
「…じゃないわけね。だよね。園山さんだったら今更、相談なんかしないもんね。じゃ、誰?」
相談を持ちかけておきながら、うつむいてしまうわたし。その顔は真っ赤だ。
「男か。しかも、相談しなきゃいけないような相手なわけね」
頭の回転と察しのいいまもちゃんは、わたしが何も言わなくてもちゃんとわかってくれる。
姉御肌でその面倒見の良さは大学時代から人気者だった。だから、わたしのこともいつも、「ほうっておけない」と言って傍にいてくれた。わたしもまもちゃんにだけは園山さんのことを相談できた。
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