とめられない。

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彼がお店に来てくれるたびに、わたしに気づいて笑いかけてくれるたびに、わたしの心の中で大きく育っていく気持ちがあった。 ――…こんにちは ――…今日はカプチーノにしようかな ――…テイクアウト、お願いできますか 彼の言葉や仕草、視線から指先のひとつひとつまでも。 わたしに見せてくれるそのすべてが、わたしの心を魅了していく。 そして何よりも……光をはね返す銀色の眼鏡の向こう側に隠れている寂しそうな瞳。時折彼におとずれる、何かを諦めてしまったような瞳の色はまるで自分を見ているようで切なかった。 そして思い出してしまうんだ。あの時、触れた彼の冷たい指先を。その冷たい指先を温めてあげたい……何かしてあげたい。そう思ってしまうほどに。胸が苦しくなる。 わたしが黙り込んでしまうと、まもちゃんが言った。 「言っておくけど、わたしは何も言わないから」 少し突き放すような口調に、わたしはハッとして顔を上げる。そこには、とても言葉では言い表すことができそうにもないまもちゃんの顔があった。
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