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そこにあるはずだったそれらは突然、わたしの手をすり抜けて消えてしまった。何をしていても、誰といても。将来は変わらないと知った。そればかりか、
――…あなたには自覚が足りないようね。そんなことでは園山さんに愛想をつかされてしまいますよ…――
わたしを縛る、周囲の視線。何をしていても誰といても。手に入らない。手を伸ばすことさえもできない。それならいっそ、見なければいい。目を閉じてしまえばいい。この両手を縛り上げて動けなくしてよ。夢も未来も、恋さえも……わたしには必要ないんだから。
ふと、さっきまで読んでいたWeb小説の主人公の姿がまぶたの裏に浮かんだ。もしもわたしに彼女のような強さがあったなら、この運命に抗うことができるのだろうか。もしもわたしに彼女のような若さがあったなら、未来を少しでも変えることができただろうか。
小さな閉ざされた世界でしか生きられない臆病なわたしだけれど、それでも本当に「欲しい」と言葉にできたのなら、それを手に入れることができる?
たとえば自由、とか。
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