それから出会い。

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園山さん―…園山宰さんと初めて会ったのは大学を卒業する少し前だった。 顔合わせのために両家両親も同席していたこともあって、主に仕事の話ばかりをお互いの両親が話していた。だから、この時、園山さんと会話を交わした覚えはない。ただ、園山さんの海外勤務が決まった話とそれによってわたしに3年間の執行猶予が与えられたことしか。 園山さんのご両親は慣れない海外生活を支えて欲しいと、すぐに結婚して一緒に海外へ行ってもらいたがっていた。けれど、これにはさすがにわたしの両親が反対してくれた。3年の間に花嫁修業をさせます、と。実家を出たことのない世間知らずで人見知りなわたしをどこに出しても恥ずかしくないように、と。 元々そういうつもりだったのか、それとも、わたしに対してせめてもの罪滅ぼしのつもりなのか。とにかくわたしの両親は大学卒業後は会社に就職することをしきりにすすめてきた。就職が決まったばかりだったわたしは、両親の説得のおかげで結婚を先延ばしにすることができた。 3年間は自由だ。そう安心したわたしが甘かった。社会に出れば嫌でも思い知らされることになったのに。わたしにはみんなのように自由な選択がないということを。 もしかしたら、それを思い知らせることが両親の言う社会勉強だったのかもしれない。
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