櫻咲く

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櫻咲く

その晩、私はいつものように清さまの部屋へと忍んで行きました。 「浮かぬ顔だが、何かあったのか?」 清さまは隣に座って肩を抱き寄せ、私はその胸に顔を埋めます。 「静子姉さまが、私は姉さまの身代わりで旦那様のお相手をしているだけだと……」 経緯からすればそのように思われても仕方ない事ではありましたが、すっかり旦那様に心を奪われておりました私からすればそれは悲しくて虚しいこと。 さめざめと涙を落としましたら、旦那様は私を強く抱き締めて下さいました。 「誰か知らぬが余計なことを静子に吹き込んだのだな。(おれ)は静子の事はもう……今は千津だけが安らぎだ。己の心はもうお前のものだ」 死の淵より辛うじて戻ったとはいえ静子姉さまはまるで幽鬼のようにやせ衰え、あの美しかった方とは思えぬほど恐ろしげな風貌へと変わり果てておりましたから、清さまの御心が私に移ろうのも無理はありません。 「千津……可愛い千津……」 「旦那様……ぁっ……」 旦那様の大きな手が浴衣の懐に忍び込み、胸の膨らみを弄びます。 「白くて薄紅色の……櫻のようだ……」 旦那様はそう仰っていつも私の胸を貪るのです。 白い肌に唇を添わせ、薄紅の中心を舌先で転がされれば身体の中を熱が満たします。 「旦那様ぁ…………はぁ…………ぁん……」 旦那様の頭を胸に抱えて身体に余る熱を吐き出すと、次に来る刺激にまた濡れた声を漏らすします。 「漏らす声まで愛らしい……もっと聞かせておくれ」 「だめ……ぇ…………ねえさまに……聞こえて……っ…………あぁん……やぁん……」 私の白い脚を旦那様の逞しいおみ足に擦り付けて、腿を伝うぬめりを感じる頃にはもう声を抑えることなど出来はしませんでした。 身体中をまさぐる旦那様の手と身体を貫く熱に踊るように身をくねらせる中、床の間の日本刀が目に入り、同じく貫かれる鞘のように仰け反って声を上げる…… そうして夜はふけてゆきます。 この晩から清さまは、私を抱く度に言い聞かせるようにその御心が私に有ると囁くようになりました。 其れはより一層私達を燃え上がらせる事となりましたが、そうなることできっとより静子姉さまを苦しめたので御座います。
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