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俺、小谷柚季が大崎廉に出会ったのは大学1年の時。
フットサルサークルの新入生歓迎会だった。
入学してすぐに仲良くなった佐藤に誘われ参加したものの、初対面には人見知りを発揮する俺はなかなか輪に入ることができずにいた。
一人オレンジジュースをちびちび飲みながら興味本位で参加したことを後悔していると、酔っ払った名前の知らない先輩に絡まれた。
酔っ払いとはいえ先輩を無下にはできず困っていた俺を助けてくれたのが、2学年上の廉さんだった。
廉さんはサークルには入っていないものの、以前助っ人で試合に出たらしく、そのお礼と勧誘を兼ねて招待されたらしい。
廉さんとは学部学科が同じだったこともあり、歓迎会が終わるまで選択科目のアドバイスや専攻分野の話、趣味の話に花を咲かせた。
陽気で明るい雰囲気の先輩が多い中で、終始落ち着いた廉さんの佇まいは魅力的に見えた。
結局何処のサークルにも入らなかったが、廉さんとの交流は続いた。
校内で会えば廉さんから声をかけてくれるようになり、次第に教科書の貸し借りや試験勉強のアドバイスを貰ったり、空き時間に一緒に過ごすこともあった。
男同士だなんて考える暇もなく、優しくて包容力のある廉さんに気付けば心惹かれていった。
過去に彼女がいたらしい廉さんに想いを伝えたところで、きっと成就することはない。
だから伝える気はなかった。
けれど、1年2年とともに過ごすうちに心に秘めておくことが苦しくなった。
何も望まない、ただ気持ちを伝えるだけ。
こんな気持ちを向けられても困るだろうけど、彼ならきっと軽蔑したり言いふらしたりはしないだろう。
廉さんが卒業を控えた1月、俺は廉さんに告白した。
告白しなければ、廉さんが卒業したとしても後輩の一人として関係を築くことができたかもしれない。
それでも…めちゃくちゃな言葉で泣きながら好きだなんだと伝える俺に訪れたのは、暖かな抱擁だった。
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