柚季side

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あれからもうすぐ3年。 俺と廉さんは今も恋人として過ごしている。 泣いて迫った俺に同情心から付き合ってくれたであろう廉さんのために、俺はできることはなんでもしよう、好きになってもらえるように努力しようと頑張った。 付き合って最初の2年、俺は大学やバイトが早く終わると廉さんが大学時代から一人暮らしをしているアパートで夕飯を作り、彼の帰宅を待った。 廉さんが仕事から帰ってきて少し会話をしてから、俺は泊まらずに帰るようにしていた。 廉さんには「無理しなくていい」「遅いから心配だ」「泊まっていきなよ」と散々言われたが、俺が一目会いたくて勝手に通い詰めているのであって、仕事で疲れているであろう彼の負担にはなりたくなかった。それに、実家暮らしの俺は毎日のように外泊するわけにもいかなかった。 そのうえ、俺も社会人になると会える回数は極端に減ってしまった。 俺の職場は、廉さんのアパートの最寄駅から2つ隣。 電車を何本も乗り換えるほど遠い実家と比べれば近いけど、時間的にも体力的にも仕事終わりに会えるほどの余裕はなくなった。 毎日メールや電話でやりとりはするものの、実際に会えるのは週に1回。金曜日の夜、廉さんの家に泊まり土日を一緒に過ごす。 とはいえ、若手社員の宿命なのか金曜日は歓迎会だの接待だのと頻繁に予定が入り、会えないことも多かった。 会えないことを詫び嘆く俺を、その度に廉さんはただただ優しく労い、気にするなと声をかけてくれた。 けれど、廉さんが好きで好きでたまらない俺にすれば、もっと会いたいし、もっと長い時間を一緒に過ごしたい。 最近では廉さんが俺のことを好きになってくれてると感じるようになったけれど、あわよくば廉さんにもっともっと好きになってもらいたい。 そんな上手くいかない下心と慣れない仕事の疲れで落ち込んでいると、廉さんは察して「実家に行くわけにもいかないから」と仕事終わりに俺の会社の最寄駅にある小さな公園まで会いにきてくれた。
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