柚季side

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季節は街中がイルミネーションに囲まれた12月。 来月には付き合って3年目の記念日が待っている。 俺は普段より遅く仕事を終え、2週間ぶりに廉さんの家に向かっていた。 定時に帰る予定だったけれど、年末年始の業務に追われて随分と遅くなってしまった。 今日は廉さんのほうが早いかもしれないなと思いながら、帰路を急ぐと廉さんの家の前で電話する男を見つけた。 廉さんだ。 「……柚季に…」 聞こえてきた自分の名前に、咄嗟に歩みを止めた。 「…あぁ、これからはずっと一緒にいたいと思ってる。……早く会いたい。……今日と明日は柚季がいるから無理だ。…とにかくそっちには来週には行くから申し訳ないけど待ってて。……好きだよ。」 ずっと一緒にいたいって? 早く会いたいって誰に? 俺がいるから会えないの? 好きってなに? 街灯の下、照らされた彼は初めて見る顔だった。 これまで彼に愛しそうに優しく微笑む顔を向けられたことはあっただろうか。 記憶の中の彼はいつも冷静で控えめに微笑む程度。稀に喜怒哀楽を顔に出さないぞというように少し下唇を噛むことがあるくらいだ。 甘く情熱的な愛の言葉を贈られたことはあっただろうか。 廉さんは同情心から俺と付き合ってくれたようなもの。だから「好きだ」とか「会いたい」とか言われなくても仕方ないと思ってた。 けど…。
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