柚季side

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気付けば、廉さんは電話が終わって家に入ったようだ。 俺だって数分前までは家に入るつもりだった。 でも… さっきの電話を聞いて、自分はここにいてはいけないんじゃないかと思い始めた。 廉さんは別に好きな人がいるのではないか。 最近会えてなかったし、会えても俺が仕事で疲れて余裕がなかったから別れ話ができなかったんだ。 そういえば最後に会った時、いつも余裕のある廉さんには珍しく落ち着かない様子で、何度も俺の顔を覗き込んでは考え込んでを繰り返していた。 一度そう思ってしまったら、ここ最近の彼の一挙手一投足がどれも違って見えてくる。 最初は同情心だけだったかもしれないけど、一緒に過ごすなかで、ちゃんと俺を好きになってくれたのも知っている。 それでもやっぱり俺じゃダメだったんだ。 廉さんが俺なんかを好きになってくれるなんて奇跡のようなものなのに。 俺なんかをずっと好きでいてくれるはずないのに。 忙しさを理由にちゃんと向き合えてなかった。 彼の優しさに甘えすぎていた。 なんで今になって気付くのだろう。 もう彼の心は別の人のところにあるというのに。 スマートフォンにメールが届く。 見れば、廉さんから帰宅しない俺を心配する連絡だった。 こんな時でも心配してくれるんだなと嬉しい反面、会わなければ別れ話にもならないのではないかという考えが頭をよぎる。 ずるい俺は[仕事が終わらないから今日は行けなくなりました。疲れてるから明日も会えません。]とだけ返信し、逃げるようにその場から引き返した。
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