柚季side

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あれから半月が過ぎた。 あの日、廉さんから着信が入っていたけれど電話には出なかった。 その後も何度も連絡があった。何回かに一回、年末年始で忙しいだとか風邪をひいただとか理由をつけて、一度も会わないまま年を越した。 流石におかしいと思っているだろう。 我が身のためにろくに返信もしない俺なんかいつ振られてもおかしくない。 それなのに廉さんからは [話したくないかもしれないけど、会って話がしたい] [嫌なところがあったのなら言ってほしい] と言った文面とともに [ちゃんと食べてる?] [今日は一段と冷えるらしいよ] と俺を気遣う言葉を添えたメールが毎日届く。 彼らしい優しさが嬉しくて辛くなる。 ついに逃げてばかりはいられなくなった。 俺のもとに届いた1通のメール。 [金曜日の18時、いつもの公園で待ってる。] 俺に会おうと思えば会社前で待ち伏せすればいい。 それをあえて俺の判断に委ねるあたり、きっと俺の気持ちを尊重してのことだろう。本当に真面目な彼らしい。 逃げてばかりじゃいけないことも分かってる。 彼のためにもちゃんと向き合わなくちゃ。
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