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今日は廉さんが公園で待ってくれている金曜日。
いざ当日になってみれば、俺は朝から取引先のトラブル対応に追われていた。
やっと仕事が終わったと時計を見れば19時半を指している。
外に出ると、雪がちらついていた。
雪が降る予報だっただろうか。風が冷たい。
地面に雪が積もっているのを見れば、随分と前から雪が降っていたのだろう。
流石に廉さんも18時にこないと分かればすぐに帰っているに違いない。
それでも連絡の一つくらい入れるべきだった。
いないと分かっていても、俺の足は公園へと向かっていた。
いつも彼が待つ街灯の下に俯く男の姿。
「廉さん……!!」
俺の声に街灯の下にいた人物は顔をこちらに向けた。
「柚季…きてくれたんだ、ありがとう。」
「廉さんどうして!!こんな雪の中、もう時間だってとっくに過ぎてる。」
こんなことを言いたいんじゃない。
「残業になってさっききたところだよ。柚季に会えてよかった。」
「さっききたところって…」
赤くなった鼻先、肩に積もる雪、駆け寄った時に偶然触れた缶コーヒーの冷たさがずっとここにいたことを教えてくれる。
振られると分かっていても、どこまでも優しい彼が愛おしい。俺から距離を置いたとはいえ、会えたことが堪らなく嬉しい。
もうなんて言ったらいいのか分からなかった。
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