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「この任務が終わったら、王都に帰れる。サクラ、俺と結婚してほしい」
「嬉しい……! 私もカイルと結婚したい!」
それなのに、その後のことが全く思い出せないのだ。気づけば私はこの部屋に戻ってきていて、呆然としたのを覚えている。
なんで戻ってきてしまったのか? 魔法陣を踏んだ覚えもなく、ただ目覚めたら日本に戻っていた。もしかしてすべて私の妄想だったのかと考えたけど、胸元にあるカイルの聖魔力が入ったネックレスが、現実にあったことだと示していた。
カイルに会える気がして、何度もさわったネックレス。蓋のついた瓶がチャームになったそれを、私は日本にいても肌身離さず身につけていた。
「一年か……なんで戻れないの?」
どんなにそのネックレスに願っても、カイルのもとに戻ることはなかった。それでも諦められない私は、今日もこのネックレスをさわって、眠りについた。
「や、やばい! 寝過ごしちゃった! しかも昨日、帰ってきたままで寝ちゃってるし!」
急いでシャワーを浴び、身支度をして家を出る。駅までは五分。会社までは電車で十五分か。
(ギリギリ間に合わないかも。今日はスニーカーだから、近道して行こう!)
数分の遅れで電車に乗れなかったら遅刻してしまう。私はいつもは通らない裏道に入って行った。その時だった。
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