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しかし聖女だと説明しようと口を開いた瞬間、喉に強烈な痛みが襲いかかる。まるで高温の油を飲んだように、ねっとりとまとわりつく熱い痛み。
ゲホゲホと咳き込む私に、まわりの男たちは「動くな!」と叫びだす。それでも説明しなきゃと口を開くと、またあの痛みが襲ってきた。
「動くなと言っているだろう。顔を上げろ!」
気づけば私の目の前には、ギラリと光る鋭い剣が向けられていた。しかしそれより私を驚かせたのは、その声だ。
(この声……、この人は……!)
私はそろそろと顔を上げ、声の主を確かめる。目の前にいる男は、青みがかった黒髪に、深い藍色の瞳。しかしそこに私を優しく見つめる色はない。
(カイル……!)
鋭い剣先を向け、私を睨みつけるその人は、まぎれもなく結婚の約束をした、私の恋人「カイル」だった。
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