03 忘れられた聖女

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03 忘れられた聖女

  (カイルだ! ようやく会えた!) 「グッ……ゲホッゲホッ」  カイルの名を呼ぼうとすると、また喉に強烈な痛みが走り、言葉が出てこない。でもカイルと会えた。それならすぐにこの拘束も取ってもらえるはず!  それなのに、目の前のカイルはさらに険しい顔をして、私を睨みつける。 「おまえは何者だ! どこから入ってきた! 答えろ!」 (……どうして? カイルは私のこと、わからないの?)  こんなにはっきりと目が合っているのに、カイルは私の名前を呼んでくれない。それどころかますます怪しいと判断し、私の首筋に剣を当ててきた。ヒヤリとした刃の感触に、現実に起こっていることだと、嫌でも思い知らされる。 (顔が似てる別人なの? だってカイルなら私のこと、忘れるはずがないもの)  でも彼には兄弟はいなかったはずだ。だってプロポーズしてくれたあの日「俺は一人息子だから、サクラと結婚したら娘ができたと言って、両親が大喜びするぞ」って言ってたからよく覚えてる。  何かがおかしい。それによく周囲を見てみると、見知った顔が何人かいた。名前までは覚えていないけど、たしかアルフレッド王子の側近だったはず……。 (一人で歩いている時に挨拶してくれた人もいるから、絶対に私の顔がわかると思うのになんで?)
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