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彼らはカイルと同じように、突然現れた私を睨んでいる。私が聖女だと気づき、助けてくれる人はやっぱり出てこなかった。
「おい! キョロキョロするな! 誰か仲間がいるのか? 答えろ!」
何も話さず挙動不審な私に苛ついたのか、カイルはいっそう乱暴な口調で問いただす。押し当てられている剣の刃も、力が込もっているのかカタカタと震えていた。
それでも話そうとすると喉が焼けるように痛くなるから、話すことができない。そのうえ私が聖女だと証明してくれる人もいないのだ。
(どうしよう! どうすれば、私が聖女だってわかってもらえるの?)
私を刺し貫くのではないかと思うくらい睨みつけるカイルの姿に、ここには私を助けてくれる人がいないのだと感じ始めた時。私を囲む人だかりの奥から、一人の女性の声が聞こえてきた。
「カイル、その者は危険だわ。わたくしには、わかるの。だってこの部屋に突然現れたのよ? みなさんも見ていたでしょう?」
私を囲む人だかりの奥から、一人の女性の声がした。この声は聞いたことがある。たしか、この人は……。
「アンジェラ王女! 近づいてはなりません!」
「あら、大丈夫よ、カイル。だって婚約者のあなたが、守ってくれるのでしょう?」
(婚約者? 今、カイルのこと、婚約者って言った……?)
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