03 忘れられた聖女

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「転移の魔術」はこの国で、カイルと師匠のジャレドしか使えない。カイルもジャレドに教わって、ようやく習得できたのだ。私も何回か練習したが難しくてできなかったので、首を振って否定する。 「それならどうやって、この部屋に入ってきたのだ! 王宮は魔術師が結界を張っている。許可した者以外は入れない!」  その質問には答えようがない。だって私はこの王宮に入る許可をもらっている。ここにはいないようだけど、アルフレッド殿下が直々に私の血を登録したのだ。 (それに許可は持っているけど、王宮にに召喚されたことは説明できないよ。でも頑張ってみるしかない……)  私は手を広げ、指の腹を切る仕草をした。そしてトントンと手のひらに押し付け、奥の部屋にある魔法陣に血を登録したことを伝えようと頑張った。それなのに、また喉に痛みが走り、私は前のめりに倒れてしまう。 「う、ううう! ゲホッ」 「……なにをしているんだ?」  痛む喉を押さえ、なんとか座り直す。するとカイルはほんの少し表情をゆるめ、ボソッと呟いた。 「もしかして、言葉を話せないのか?」
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