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赤い顔を隠すようにアメリさんがそう言うと、あわててドレスを持ってきてくれた。
ベビーピンクのAラインのドレスに、胸元と裾にはサイラの花の刺繍が入っている。腰には少し濃い目のローズピンクのリボンがついていて、甘めのドレスだ。
「ブルーノさん、刺繍お上手!」
「本当に……私、お裁縫苦手なんですけど。女らしくないって断られたらどうしましょう……」
なんとドレスの刺繍をしたのはブルーノさんだ。私が「サイラの花は枝が固いからブーケにならなくて残念だ」と話をしたら「それならドレスに花の刺繍を入れましょう」と請け負ってくれたのだ。その時はてっきり職人がするのかと思ったけど、彼の刺繍の腕前はプロ並みだった。
「あと、こちらですね」
そう言ってアメリさんが箱から取り出したのは、ティアラだ。カイルのお母様が結婚式に着けたもので、私にプレゼントしてくれた。カイルの言うとおり私のことを娘ができたと大喜びしている。
「サクラ様、すごくお似合いです」
「えへへ。本当?」
でも我ながら鏡の中の私は、自分史上一番綺麗だと思う。肌ツヤも良く幸せに愛されている顔をしている。
(頑張ってこの日を迎えたんだもん。今日くらい自信を持っていいよね!)
「準備ができましたから行きましょうか。カイル様もきっとソワソワしてますよ」
一階に降りると、アメリさんの言葉どおりカイルが落ち着かない様子でウロウロしていた。私を見つけると一瞬ぼうっとした顔で固まり、そしてぎゅっと抱きしめられる。
「なんて、美しいんだ。誰にも見せたくない」
「カイル! 嬉しいけどお化粧が取れちゃう」
「ああ、そうか。でも化粧が落ちたところで君の美しさは――」
「カイル様! もう皆さん集まってますので始めますよ!」
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