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だって、あのプロポーズしてくれた日の続きみたいだ。私はほんの少しうつむきながら一歩前に進む。カイルの手が肩にふれたのを合図に、私は顔をあげ目をつむった。
ゆっくりとカイルが近づく気配がして、そして彼の唇が重なった。
その瞬間、二度目に召喚されてつらかった思いが全部消えていってしまった。苦しかったこと淋しかったこと、全部どうでもいい。私が目を開けると、カイルがいる。それだけで幸せだ。
そして私たちが同時に祭壇のほうを見ると、司教様は目を赤くしてニッコリ笑った。
「ここにカイル・ラドニーと聖女サクラ・ワタナベの結婚を認める!」
わあっと歓声があがった。私とカイルも顔を見合わせほほえみ合う。すると客席から一人の男性が立ち上がったのが見えた。師匠だ。
「サクラ、僕からのプレゼントだよ」
そう言うとジャレドの足元に魔法陣が浮かび上がった。そのまま両手を上げニッコリと笑うと、彼の手からぶわりと風が舞い上がる。
「きゃあ」
「ジャレド! おまえなにしてるんだ!」
司教様の文句が聞こえ、式を見守っていた皆もなんだなんだと騒ぎ始める。私もわけがわからない。するとジャレドが楽しそうな声で空を指差した。
「みんな上を見てよ!」
(え……?)
突き抜けるような青空に、サクラに似たサイラの花びらが舞っている。まるで桜吹雪だ。ひらひらと薄いピンク色の花が次から次に降り注ぎ、その美しい光景に息を呑む。
「綺麗……」
「ああ、すごいな」
手のひらでサイラの花びらを受け取ると、みんなも楽しそうにキャッチしようとはしゃぎ始めた。ケリーさんやアルフレッド殿下。カイルのご両親。司教様も近くに降ってきた花びらをまるで蚊でも叩くみたいに取っている。
(あの二人もうまくいったみたい)
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