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遠くではアメリさんとブルーノさんが同じ花びらを取ったようで、顔を赤くして笑っていた。
(なんて幸せな光景なの……)
そして隣には、愛する夫のカイルが私に向かってほほ笑んでいる。私のことが愛おしくてしょうがないといった表情で、髪の毛についた花びらを取ってくれた。
目の前の景色は一度は失ってしまい、もう取り戻せないと思った幸福だ。今あなたが私の隣にいることすら、奇跡のように感じる。その喜びにいつもは恥ずかしがって言えない言葉が、唇からこぼれた。
「カイル、愛してるわ」
私の愛の言葉を聞いたカイルは目を丸くして驚き、そして少し泣きそうだった。
「俺もサクラを愛してる」
呪いにかかってなにも話せない時があったから、言葉で伝えられる幸せが身にしみてわかる。私はこれから何度でも彼に愛を伝えていこう。
すると師匠がしっとりと愛を囁き合う私たちを見て、からかいの言葉を叫んだ。
「ほらサクラにカイル! もう一度僕たちに二人が幸せだってところ、見せてくれよ」
「そうだそうだ! 団長!」
「サクラ様! もう一度ですよ!」
もう集まったみんなも大騒ぎだ。アルフレッド殿下も司教様も、師匠の言葉を止めようともせず期待に満ちた顔でこっちを見ている。
「もう師匠ったら……」
「いいじゃないか。みんなサクラの幸せなところを見たいんだ」
「それ、カイルがキスしたいだけじゃ……んん」
文句の言葉を最後まで言えないまま、カイルに唇をふさがれる。もうこうなったらしょうがない。私が背伸びしてカイルの首に腕を回すと、まわりが「おおお〜!」と声を上げた。
カイルも目を丸くして驚き、パッと私の体を離す。私がニヤリと笑うと、アルフレッド殿下の「これは尻に敷かれるな」という声でいっせいに皆が笑い出した。
私は自慢げにフフンと笑い、カイルも恥ずかしそうに笑っている。
雲ひとつないさわやかな青空の下。みんなに祝福され結婚した私たちは、幸せな笑い声に包まれていた。
END
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