383人が本棚に入れています
本棚に追加
縛られていた縄を解かれ、目の前に差し出された魔力検査板に手を置いた。しかしずっと拘束されていたから、手がぶるぶると震えて、きちんと計れない。
私がもう片方の手で震える手を押さえようとすると、見かねたカイルがため息を吐き、私の手に自分の手を上から重ねた。
「これで計れるだろう。しばらくこのままでいれば、魔力が判明する」
ボソリと呟いたその言葉は、さっきよりも少しだけ優しくなっていた。
(もうヤダ。泣きそう……)
懐かしいカイルの手のぬくもりが、目の奥を熱くさせる。この手は私を優しくなでてくれた手だ。浄化に失敗して苦しんでいた時に、背中をさすってくれた手だ。
プロポーズをしてくれたあの日に戻れたら、どんなに幸せだろう。そんな叶うことはない願いを心の奥になんとか追いやり、私は手にグッと力を込めた。
しかしどれだけ待っても、何も反応しない。虹色の光どころか、光ることすらしない。カイルや検査を見守っていた人たちも、その異常事態に騒ぎ始めてしまった。
「魔力がない?」
「そんなこと、ありえるのか?」
「それなら、この娘はどうやって生活していたんだ? 水を出すのにも魔力は必要だろう」
「まさか、他国からの侵入者か?」
「それでも隣国でも魔力なしは聞きませんよ」
最初のコメントを投稿しよう!