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口々に周囲の人たちがそう言うなか、カイルの後ろにいたアンジェラ王女が、ニヤリと意味深な笑みを私に向けていた。
「魔力がないなら、なおさら危険だわ。この侵入者を操っている黒幕がいるのでしょう。それを隠すために、わざと話せないフリをしているのではないかしら?」
さっきまでの笑みが消え、今は私を怖がるような態度でアンジェラ王女が話し始めた。その意見にまわりも「たしかにそうかもしれない」「話せないなんてあり得ないからな」と賛成し始める。
(そんな! 黒幕もいないし、話せないのも事実なのに……!)
「拷問をして仲間のことや、王宮で何をするつもりだったのか、吐かせればいいのでは?」
「拷問」という言葉に、バクンと胸が跳ね上がる。その意見を言った人物は、アンジェラ王女の隣に立ち、私をじっと見つめていた。恐ろしい言葉を言ったのに、その顔にはなんの表情もなく、まるで人形のようだ。
(あの男の人、アンジェラ王女の家庭教師?)
見覚えのあるその人の名は、たしかエリックだ。アンジェラ王女以外の人には全員無関心で、もちろん私も会話すらしたことがない。隣に立つ王女はエリックの提案に「それが一番良い方法だわ」と満足そうに笑っていた。
しかし、その提案を聞いたカイルは、苦々しい顔で二人のほうを振り返る。
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