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「アンジェラ王女、拷問による自白は国家間で禁止されております。この侵入者が他国の者だった場合、大問題ですよ。それに騎士団に命令を下せるのは、アルフレッド殿下だけです。殿下も明日には王宮に戻ってきますので、それまでこの者の処遇は保留にいたします」
その返事にあからさまに感情をむき出しにしたのは、やはりアンジェラ王女だった。ワナワナと体を震わせ、私を指差すと大声で叫びだす。
「なら、すぐにこの者を牢屋に入れなさい! わたくしは聖女としての仕事があるのですから、こんな女を見ていたら魂が汚れてしまうわ!」
(聖女? アンジェラ王女は、今自分のこと、聖女って言った?)
私が一年前この国に召喚された時は、聖女は私一人だった。その時にすでにアンジェラ王女はいたのだから、聖女なはずないのだけど。それとも私がいない間に、聖女の力を覚醒させたのだろうか?
「……わかりました。ではこの侵入者を牢に連れて行け。ただし手荒なまねはするな。ただの利用された被害者かもしれん。すべてはアルフレッド殿下が戻ってからだ」
「は!」
(牢屋……私、牢屋に入れられるんだ。なんでこんなことになったの?)
それでもカイルの指示どおり、私は乱暴なことはされず、淡々と牢屋に連れて行かれた。入れられた牢屋は湿っていてカビ臭かったけど、文句など言えるわけがない。
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