05 すべてを奪われた理由

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05 すべてを奪われた理由

(もしかして、カイル……?)  私はあわてて鉄格子をつかみ、こちらに向かってくる人を探した。暗い廊下にオレンジ色のランプの灯りが、ゆらゆらと近づいてくる。そしてそこに現れた顔は。 「久しぶりね。サクラ」  アンジェラ王女だ。後ろには私に拷問しろと言った、エリックも立っている。 (え? 今、私の名前を呼んだ? じゃあ王女は私のこと、覚えてるの?)  声を出すこともできず、目を大きく見開き二人を見つめていると、王女は口の端を歪ませ笑い始めた。 「呪われて、みんなに忘れられた気分はどう? 牢屋の居心地は良いかしら?」  口に手を当てクスクスと笑い、面白くてしょうがないといった様子だ。私が呆然としているのを、アンジェラ王女は楽しそうに見ている。 (呪い? 私、呪われて皆に忘れられたの? どうしてそんなことに……) 「どうしてって顔ね。ふふ。それはあなたが、カイルを私から盗んだからよ。だから今度は私があなたから、聖女の力も声もカイルも、奪ってあげたの」 (私がカイルを王女から奪った? でもカイルは恋人はいたことがないって言ってたわ……)  アンジェラ王女は私の疑う視線に気づいたのか、ジロリと睨み、鼻で笑った。 「あら、気づいてなかったの? カイルもかわいそうにね。あなたのお守りをさせられて。愛するふりをして聖女様のご機嫌を取ってあげないといけなかったのだもの」 (愛するふり? 私のご機嫌を取るために、私に好きだと言ったといいたいの? 何も知らないくせに!)
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