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あまりに身勝手な言動に、思わず握っていた鉄格子に力が入る。静まり返った牢屋にカタカタと鉄の棒が揺れる音が響き、私の動揺が伝わっていく。しかしその反応は、王女にとってかえって楽しいものらしく、今度はお腹を抱えて笑い始めた。
「あははは! 無様ねえ。私あなたが大嫌いだったわ! たかが瘴気を消したくらいで皆に大切にされて、いい気になってたでしょう?」
(たかが? たかが瘴気って言った? あの瘴気でどれだけの国民が苦しんでたと思うの? 結界で守られた王宮で、お茶ばかりしているこの人に、彼らの苦しさなんてわからないんだわ!)
私がこの国に召喚された時、大勢の人たちが瘴気のせいで、病気になっていた。その場所もさまざまで、足が動かなくなる人もいれば、目が見えなくなるひともいた。大人から子どもまで、例外なく襲う瘴気の毒に、みんな怯えて暮らしていたのだ。
(あの状況を見たことない王女に、言われたくない!)
反対にアンジェラ王女はいつも豪華なドレスを身にまとい、遊ぶだけの毎日を過ごしていた。アルフレッド殿下の困りごとの半分は、父親が彼女を甘やかして育てること。王女に注意しても、将来は他国の王族に嫁ぐのだからと、わがまま放題だった。
(絶対に彼女が聖女だっていうのは嘘だわ! 浄化は練習なしではできない。時に失敗もして、苦しむことなんてザラにあるのよ。こんな甘ったれた彼女が、浄化なんてできるはずないわ!)
どうせ私を苦しめようとここに来たのだろうけど、聞いても無駄だ。私は彼女にくるりと背を向ける。しかし次の瞬間、首に激痛が走った。
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