05 すべてを奪われた理由

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 そういうことか。私にだけわかる言葉で、聖女の私を処刑するのに良い場所だと言っている。本当に残酷な人だ。しかも突き落とす役は、恋人のカイル。ああ、元恋人といったほうが、気がラクだ。  だって、彼は私に剣を突きつけて、王女の命令どおり私を崖から落とそうとしているのだから。 「悪く思わないでくれ」  カイルの声が聞こえる。もう何も考えたくない。ただ一つ悔やむことは、あのネックレスと死ねないことだわ。  後ろから、ジャリッと地面を踏みしめる音がした。そろそろだわ。私はゆっくり目を閉じる。そして次の瞬間。  ドンと強い力で背中を押され、私は一人、谷底に落ちていった。  違う。一人じゃない。私を後ろから、強く抱きしめている人がいる。カイルだ。 「目を閉じてくれ!」  目の前には激しく流れる濁流が、そこまできている。  そして次の瞬間、まぶしい光が私たちを襲い、目の前が真っ白になった。
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