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――守ってあげたい。いや守らなくてはならない。
また声が聞こえる。この侵入者の女を、この国の騎士団長である俺が守る? どう考えても道理に合わない言葉に、混乱していたその時だった。
「うう!」
女の首に当てられていた刀が、彼女の肌に傷をつけた。つうっと血が流れ始め、一気に罪悪感が襲ってくる。
(罪悪感を持つほうがどうかしているぞ。彼女は危険人物なのだから)
それでもその真っ当な考えは、頭に入ってこない。思わず剣を引っ込め、彼女の縄を解きたくなる気持ちを、おれは歯を食いしばって我慢した。
(彼女はやはり、魔術師なのかもしれない。それも精神関与ができる高度な魔術師……。それならここに転移の魔術で入ってきてもおかしくない)
しかし転移の魔術はかなり習得が難しいのだ。俺もこの国で一番の魔術師ジャレドに教わったが、かなり時間がかかった。あの時誰か他にもいたような気がするのだが、思い出せない……。
案の定、彼女は否定した。とはいっても、ここに侵入した手段をペラペラ話すわけがない。その前にこの女は、一言も発していない気がする。すると彼女はなにやら俺に伝えようと、手を広げ指の腹をトントンと叩き始めた。
(なにをしているんだ? まさか、何かの魔術を仕掛けている?)
少し警戒して様子を見ていると、また彼女は咳き込み始める。これはもしかして。
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