01 一度目の召喚

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 師匠はモテる。本人もそれを自覚してたから、よく女の人と遊んでいた。それを冷たい目で見ていたのが、恋人のカイルだった。 「初めて会った時は、私にも冷たかったもんね……まあ、私も喧嘩ごしだったけど」  瘴気を浄化する能力が上手になってきた頃、私が暮らしている教会に、一人の騎士がやってきた。 「王都から来た、カイル・ラドニーです。ここに瘴気を浄化する聖女が現れたと聞いてやってきたのだが、どこにいるのだろうか? この部屋にいると言われたのだが」 「えっと、あの、私がそうですけど、どんな御用でしょうか?」  目の前に立つその騎士は、私が聖女だと言うと、あからさまに疑いの目を向けてきた。もしかして、今私が師匠のマッサージをしているのがいけないのだろうか? 今日はこの授業のために、聖女用の服ではなく、世話係のアメリさんと同じ服を着ている。 (教会の職員だと思われたのかな?)  それでも今の私は授業中で、手を止めるわけにはいかない。コツがわからなくなってしまうからだ。するとその様子を見た騎士は、いっそう険しい顔でまた聞いてきた。 「……本当にあなたが、聖女なのか?」 「は、はあ……そうですけど」  もう一度そう答えるも、どうも信用していない様子だ。するとマッサージのために、うつぶせで寝転んでいた師匠が、ブルブルと震え始め、しまいにはプッと吹き出してしまった。
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