01 一度目の召喚

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 そっと革袋の紐を緩めると、一気に黒い瘴気があふれ出してきた。私はそれを手で包み、そっと自分の胸元に持っていく。ゆっくり、あせらず。師匠に言われたコツを頭で繰り返し、瘴気を体に取り込んだ。  そしてゆっくりと息を吐き、浄化した綺麗な「気」として空に放った。私から出たキラキラと光る聖魔力の粒が入っている気は「聖気」と呼ばれている。その聖気が空に溶け込んで、この国の結界に届くと、成功だ。  私は空高く飛んでいった聖気をにっこりとほほ笑みながら、見つめていた。 (ほ〜ら! 完璧にできたもんね! これで私が聖女だって、信用してもらえるでしょう!)  くるりと騎士のほうを振り向き、自信満々の顔で「いかがでしたか?」と感想を聞いてみる。すぐに「あなたが聖女様だったのですね! 先ほどは無礼なことを!」なんて謝ってくれると確信していたのに、なぜか目の前の騎士は呆然としていて何も話さない。  その反応の悪さに、私はある重要なことに気づいた。
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