Chapter.1

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「……僕だって ホントはそっちに行きたいよ」 「じゃあ! 」 「でもな、ダメなんだ。 こっちの世界で、 こんな僕でも待っててくれる人が居る。 君もそうだろ?」 「修司さん……」 スアンの目に涙が浮かんだ。 「修司さん……。 貴方と出逢えてホントに、ホント……」 「それはコッチの台詞だよ」 「え? 」 スアンの手をより一層強く握った。 「君のお陰で 僕は過去の自分を肯定できた。 もう怖くなくなったんだ」 「修司さん……」 「ありがとう、 助けてもらったのは僕の方だよ」 修司は手を離し エレベーターの扉から離れた。 「お別れだ、 早くしないと朝陽が昇っちゃうぞ? 」 「……これが最後って事ですか? 」 「最後だけど、終わりじゃない。 スアンのこと一生忘れないよ」 スアンの顔に笑みが浮かんだ。 そこで彼女は手に違和感を覚え、覗き見る。 氏名:倉山修司 受験番号:1164 「それ、捨てといてくれ。 親にバレたらまずいんだ」 手を握る時、 受験票を忍ばせていたのだ。 スアンの顔が緩く綻んだ。 「修司さん、 貴方は嘘つきじゃありませんでした。 わたしが保証します」 彼女の指が エレベーターの[開]ボタンから離れる。 「どうか……、どうか、お元気で」 そして エレベーターの扉がゆっくりと閉まった。
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