298人が本棚に入れています
本棚に追加
一
「なあハル、ちゅーしよー! ちゅー!」
白昼堂々、大好きな秋文から結構な真面目顔で言われて即座に「バカだもんな」と返せなかった俺は、まだまだ未熟者だ。
キツ可愛い顔の中でも特に印象的なアーモンド型の目がキラキラ輝いてて、なんつうか言われた内容と相まってバカ正直に喉が鳴ったりしたさ。
乾燥すると切れるからと透明のリップを塗った赤い唇から目が離せなくなる。
テロリと光るそれを一番初めに天麩羅食ったんか? じゃなくてエロい方に結びつけちゃったのは、俺の気持ちの問題なんだろうなあ。気がついたら唇のピアスを舐めてた。無意識怖いわ。
「ハイ出た。アキワールド。今度はなんだよ」
ソファーに寝っ転がり、太い腕のせいでやたら細く見えるドラムスティックを所在なく回していたショウタが、たいして面白くもなさそうに眼球だけこっちに向けてきた。
「や。これさ、見て見て!」
秋文は一人掛けのソファーに座っていた俺の横にグリグリと華奢な腰を押し付け、肘置きに座るようにしてスマホを差し出す。
見ると秋文のスマホの中では、どっかの海外バンドか? ボーカルとベースの若い外人がステージ上、男同士で軽いキスを交わしていた。
まあやっぱ洋物だからか、なんとも美しい映画のようなキレイなキスだ。
「な!? コレだと思わね!?」
……何を?
固まる俺の手からスマホが消え、目を上げれば長い手を伸ばしてるショウタの姿。
画面を目にし呆れたように眉を下げて、秋文にスマホを投げ返した。
「これをお前らでやるってか?」
「いや、ここまではやんないよ、勿論。フリフリ! してるフリ!!」
「はっ。いっそセックス動画でも載せろ」
完全にバカにしきったようなショウタの言葉。
心臓がドキリと跳ねた。
セックス動画……。
秋文とヤるのを想像しかけて、そうなると俺は上下どっちなんだ? なんて想像してしまうのは致し方ないだろう!?
最初のコメントを投稿しよう!